笑顔を残して帰るまでが仕事。高槻で訪問鍼灸を始めた近藤先生の原点

INTERVIEW

  1. ギフト訪問はりきゅう院
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  3. 笑顔を残して帰るまでが仕事。高槻で訪問鍼灸を始めた近藤先生の原点

PROFILE

ギフト訪問はりきゅう院

代表・院長 近藤 聡 (こんどう さとし)

はり師/きゅう師

070-9174-6774
  • 所在地 大阪府高槻市川西町1-24-5
  • 対応エリア 高槻市・茨木市・枚方市・島本町を中心に訪問しています。その他の地域もご相談ください。
  • 受付時間 月〜土 8:00〜20:00/LINE・メールは24時間受付

高校時代に祖母の笑顔をきっかけに鍼灸師を志し、森ノ宮医療大学卒業後は大阪の整骨院グループに勤務。14年間の施術経験と約10年間の院長経験を経て、2025年に大阪府高槻市で「ギフト訪問はりきゅう院」を開業。患者様もご家族も笑顔になれる訪問鍼灸を目指しています。

大阪府高槻市。京都と大阪のほぼ中間に位置するこの町を拠点に、ご自宅へ伺って鍼灸の施術を行っているのが、ギフト訪問はりきゅう院の代表、近藤聡先生です。はり師・きゅう師の国家資格を持ち、大阪の整骨院グループに14年目まで勤めました。そのうち約10年は院長として現場を率いています。2025年に独立し、訪問鍼灸の道を歩み始めました。

取材の中で、先生が何度も立ち返った教えがあります。整骨院での駆け出しの頃、師匠から言われた言葉です。

「プラスアルファで、笑顔にさせる何かをつけないとダメだよ」

体のつらさに向き合うのは、治療家として当たり前のこと。そのうえで、会った人に何かひとつ、笑顔になれるものを持ち帰ってもらう。ご自宅に伺うようになった今、この教えは形を変えて、先生の訪問を支えています。

「笑顔を残して帰るまでが仕事」

義足の祖母がきっかけで鍼灸師を志した少年時代。独立を決めた日のこと。そして、高槻で描いている将来の夢。じっくりとお話を伺いました。

子供時代の集合写真はいつも最前列のど真ん中。岡山の8人家族で育った末っ子

近藤先生は岡山県玉野市の出身です。両親と祖父母、そして4人兄弟の8人家族で育ちました。姉、兄、姉と2歳ずつ離れて並び、先生はその末っ子です。

「小学校、中学校くらいまでは、すごく活発で目立ちたがり屋でした。集合写真を撮ると、一番前の真ん中で両手を広げてピースして、周りに迷惑をかけるような子どもで(笑)」

通知表の先生からのひと言欄には、いつも「ムードメーカー」と書かれていたそうです。友達にも恵まれ、明るく過ごした子ども時代でした。

母親に叱られた記憶はほとんどありません。その代わりに、よく叱られたのは6歳離れた一番上のお姉さんからでした。

「自分も親になった今だから、気持ちがわかるんです。一番下の子は、何をしても『はいはい』で済まされがちでしょう。一番上からすると『私はこう言われてたのに』と腹が立って、代わりに指導してくれていたんだと思います(笑)」

兄弟喧嘩はほとんどなかったといいます。「家族にはすごく恵まれました」と、先生は穏やかに振り返ります。

中学校ではバスケットボール部に入りました。いわゆる『スラムダンク』世代です。チームは市の大会で1回戦負けが続く弱小校でした。それでも、自分たちなりに本気で打ち込んだそうです。高校でもバスケットボールを続けましたが、途中で部を離れています。

義足の祖母と、「魔法使い」に見えた鍼灸師

一緒に暮らしていた祖母は、先生が生まれる5年ほど前に事故で片脚を失い、太ももから先を義足で補って生活していました。

「子どもの頃は『ロボットの足や』と言って、叩いても痛くないのを面白がっていました」

当たり前のようにそこにあった、祖母の義足。その重さに気づいたのは、高校生になってからです。祖母がリハビリに取り組む姿を目にする機会が増え、祖母自身も「痛くてしんどいね」と口にするようになりました。

「孫が大きくなったから、言えるようになったんだと思います。なんとかしてあげたいと思っても、僕には何もできなくて」

そんなとき、祖母は身近にいた鍼灸師から施術を受けるようになります。そして、リハビリを終えた祖母は、晴れやかな顔でこう話しました。

「めっちゃ楽になった」

しんどそうにしていた祖母が、うれしそうに笑っている。その姿を見て、先生は思いました。

「鍼灸師って魔法使いみたいだな、と。自分もこうなりたいと思いました」

もともと先生は、祖母のリハビリを手伝いたい一心で、理学療法士の道を検討していました。けれど、進路を決める高校3年生のときに出会ったのは、祖母を笑顔にしてくれた一人の鍼灸師の姿です。先生は迷わず、鍼灸の道へ進むことを決めました。

 

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「鍼灸師では食べていけない」という親の反対を越えて・・・

先生の両親は、父が薬剤師、母が幼稚園の先生です。医療や教育に近い家庭でしたが、鍼灸師になりたいという先生の希望には、強い反対の声が上がりました。

「『鍼灸師になっても食べていけないからやめとけ』と。身近に鍼灸師はいなかったですし、鍼灸院といえば年配の先生が年配の患者さんを診ているイメージだったんでしょうね。『鍼灸の学校に行くのはいいけど、理学療法の資格も取っときなさい』と言われていました」

特に心配していたのは母親でした。普段から声を荒らげることのない母です。このときも頭ごなしに反対するのではなく、「やめたほうがいいんじゃないの」と静かに諭すような言い方だったといいます。

それでも、先生の気持ちは揺らぎませんでした。

「全然迷わなかったですね。だって、魔法使い(鍼灸師)になりたかったので」

進学先に選んだのは、大阪の森ノ宮医療大学です。2007年に開学したばかりの大学で、当時は鍼灸学科と理学療法学科の2学科体制でした。先生は開学2年目に入学した2期生にあたります。新しい大学ならではのきれいなキャンパスも、決め手のひとつだったそうです。親は理学療法学科に出願したものと思っていたそうですが、先生が実際に出願していたのは鍼灸学科でした(笑)。

学費は両親に出してもらい、社会人になってから全額を返し終えたといいます。

地元の岡山県を離れ、大阪で一人暮らしをしながらの4年間。同級生のほとんどは、高校から直接進学してきた同世代でした。学生時代の勉強でいちばん苦労したのは解剖学です。

「解剖学って骨とか筋肉を図でイメージすることがあるのですが、自分は小さい頃から絵が苦手で、頭の中で立体をイメージするのが難しかったんです。数学でも、立体になると途端にわからなくなっていました」

そこで先生は、自分の体を実際に動かしたり、模型を手に取ったりしながら、苦手を一つずつ補っていきました。学内の卒業試験は、国家試験に挑む前の関門です。そこを通った同級生は、ほとんどが国家試験にも合格したといいます。先生も一度で合格し、はり師・きゅう師の資格を手にしました。

ちなみに就職活動を始めたのは、4年生の1月。国家試験の勉強が最も忙しい時期でした。「周りもあまり考えていなかったので」と笑う先生ですが、ここで決めた就職先が、治療家としての土台をつくることになります。

「この人の言うことなら間違いない」と思えた院長のもとへ

卒業後に選んだのは、大阪の整骨院グループでした。当時の同級生の進路は、整骨院への就職か大学院への進学がほとんどだったといいます。

その整骨院への入社の決め手になったのは、研修制度の手厚さと、面接をしてくれた社長の人柄でした。社長は柔道整復師と、はり師・きゅう師の資格を併せ持つ治療家です。

「この人の言うことなら間違いない、と思えるような人っているじゃないですか。目力というか、よくわからないオーラみたいなものがあって。それが一番の決め手でした」

先生は新卒の1期生として入社します。入社当時は小さなグループでしたが、その後、大きく規模を広げていきました。

研修は厳しいものでした。入社後の2〜3か月は、患者様に触れることなく、施術の基礎練習に明け暮れる毎日です。社内の実技テストに合格しなければ施術を担当できない決まりで、先生が初めて患者様を担当したのは、入社から半年後の10月でした。

「なかなか合格できなくて、その間はずっとチラシ配りと受付です(笑)」

その整骨院は鍼灸にも力を入れており、多い時期には来院される方の6割ほどが鍼灸の施術を受けていたといいます。先生は鍼灸師として、ここで数多くの患者様と向き合う経験を積んでいきました。

2人の師匠から受け取った「笑顔」と「感謝」

この整骨院で、先生は師匠と呼べる2人に出会います。ひとりは、最初に配属された院の院長で、技術を一から教えてくれました。もうひとりは女性の先輩で、接遇や心構えを細やかに教えてくれました。

2人から教わったことはたくさんあります。その中で、今もいちばん大切にしている教えがあります。

「体がつらい、痛い、姿勢を直したい。来てくださる方は、みんな何かしらの悩みを抱えています。そこに向き合うのは当たり前。そのうえで、プラスアルファで笑顔にさせる何かをつけないとダメだよ、と言われました」

つらさに向き合うだけで終わらせない。来てくださった方を、笑顔にして帰す。この教えは、先生の中にずっと残り続けています。

「今でもそうしようと思って、やっています」

もうひとつ、繰り返し伝えられたのが「感謝」の大切さです。

「患者様への接遇は本当に大事なので、事細かに教えていただきました。その中でも、感謝を大事にしないといけない、というのはずっと心にあります」

技術の師と、心の師。2人とは、退職した今も連絡を取り合い、良い関係が続いているそうです。

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接骨院時代は院長として約10年、「結局は人」という気づき

入社から数年で院長を任され、そこから約10年にわたって院の運営とスタッフの育成に携わりました。

患者様を担当する立場から、スタッフを率いる立場へ。見える景色が変わる中で先生が改めて感じたのは、「結局は人だ」ということでした。

「合う、合わないはもちろんあります。でも、この人に対してどういう気持ちで接しているのかで、全然違ってくるんです。患者さんに対しても、スタッフ同士でも」

相手を思う気持ちを、きちんと行動で示せるスタッフは、どんどん成長して昇格していきました。そうでないスタッフは、なかなか同じところから抜け出せなかったといいます。

「そこをちゃんと指導できれば、その子は伸びていく。それに気づかせていただいたのは大きかったです」

当時の先生は、社長が掲げる「日本一になる」という目標を一緒に追いかけ、このグループで働き続ける覚悟でいました。

8年間通ってくださった母娘との出会いが、訪問鍼灸独立の起点

しかしその覚悟が変わったのは、ある患者様との別れがきっかけでした。

先生には、8年ほど担当していた母娘の患者様がいました。もともとは、お母様と娘様がそろって通ってくださっていた方々です。お母様は90歳前後。長く目の病気を患っていましたが、次第に進行して視力を失い、ご自宅から出られなくなってしまいます。

介護を担う娘様も、通院が難しくなっていきました。さらに、先生が勤めていた院が移転することになり、電車で20分ほどかかる距離になってしまいます。それでも娘様は、介護の合間を縫って、月に1回ほど足を運んでくださいました。

施術の時間は、いつも娘様のお話を伺う時間でもありました。最初は腰や肩、腕のつらさの話が中心でした。けれど年月がたつにつれて、長い介護の疲れから、娘様の言葉は少しずつ変わっていきます。

「あれだけ仲良くさせていただいていたのに、そばで聞いていることしかできなかったんです」

やがて、お母様が亡くなったという知らせが届きます。娘様に「お疲れさまでした」と声をかけながら、先生の胸には大きな後悔が残りました。

「僕は何もしてあげられなかった、と思ったんです。ここまで通うのが大変だと娘さんはおっしゃっていたのに、そこを支えることもできなかった。お母様のことも診てあげられなかった」

もし自分がご自宅に伺えていたら、お母様にも、介護を続ける娘様にも、何かできたのではないか。その思いが、先生を突き動かしました。

知らせを聞いたのは、その日の午前中でした。先生は昼休みに社長へ電話をかけ、退職したいと伝えます。

「社長には止めていただきましたけど、もう気持ちは決まっていました。訪問鍼灸で開業しよう、と」

勤続14年目の決断でした。

「患者様もご家族も笑顔に」ギフト訪問はりきゅう院の開業

2025年、先生は奥様のご実家に近い大阪府高槻市で、訪問鍼灸の施術所を開業しました。院の名前は「ギフト訪問はりきゅう院」。掲げた願いは「患者様もご家族も笑顔になれるように」です。

先生が大学を卒業した頃、訪問鍼灸はまだ一部で始まったばかりで、広く知られた働き方ではありませんでした。それでも整骨院で多くの患者様と向き合ううちに、通院できないほど重い症状を抱える方が地域にいることを知り、訪問の意義を強く感じるようになったといいます。

そしてもうひとつ、先生の中で大きくなっていったのが、患者様だけでなく、介護を担うご家族も支えたいという思いでした。患者様が安心して暮らせることが、ご家族の安心や負担の軽減にもつながってほしい。8年間通ってくださった娘様の姿を思えば、この願いに込められた重みが伝わってきます。

院の仕組みにも、その思いが表れています。対象となるのは、寝たきりの方や一人で歩くのが難しい方など、通院が難しい方です。訪問先はご自宅だけでなく、高齢者施設にも伺い、施設では複数の方をあわせて担当することもできます。さらに、介護をしているご家族自身も、自費で施術を受けることができます。

独立してからは、大学時代の同級生とも連絡を取り合うようになりました。「独立したんか」と声をかけ合う中で、同じように訪問の分野で開業している同級生が多いことも知ったそうです。

通院と訪問はまったく違う!目標を一緒に決めるということ

開業して最初に担当したのは、知人のお父様です。脳梗塞の後遺症で、体が思うように動かない方でした。

「麻痺を取ってあげる、なんてことは、やっぱりできないんです」

整骨院とは違う現実と向き合うところから、先生の訪問の仕事は始まりました。通院と訪問とでは、向き合う相手が大きく違うと先生は言います。

「整骨院に来てくださる方は、高齢の方でも比較的お元気な方が多いんです。でも訪問では、どうしても元の状態には戻りきらない方がたくさんいらっしゃいます。その違いは、しっかり受け止めないといけないと思っています」

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通院と訪問はまったく違う!目標を一緒に決めるということ

だからこそ、訪問で大切にしているのが目標の立て方です。

「今の状態を受け止めたうえで、その範囲でできることを考える。そして『もう少しこんなことができるようになったらいいよね』というゴールを、ご本人と一緒に決めるようにしています」

もうひとつ意識しているのが、ご本人に「気づいてもらう」ことです。

「『もう歩かれへん』『もう動かへん』と、諦めてしまっている方が多いんです。でも、一緒に少しずつ動きを確かめてみると、『実はできた』ということが意外とあるんですよ。だから『これくらい全然できますよ。できるようになるまで一緒に頑張りましょう』と声をかけています」

訪問では、施術の時間のほとんどが患者様との1対1です。ご家族にも話さないような個人的なことを打ち明けてくださる方も少なくありません。

「その人の人生に寄り添いたい、というのが、訪問をやりたかった理由です。それができる仕事なんだと、すごく感じています」

整骨院で積み重ねた経験は、今も施術のベースです。ただ、訪問ではそれだけでは通用しない場面もあります。その違いを受け止めながら、先生は一人ひとりの暮らしに合わせた関わり方を探り続けています。

「あんたが来るから、起きなあかんくなった」91歳の患者様との1年

開業してから、いちばん心に残っている患者様は誰か。そう尋ねると、先生はひとりの女性の話をしてくれました。

91歳で、ひとり暮らしを続けながら、ご自宅での生活を頑張っている方です。初めて伺ったとき、その方はすっかり元気をなくしていました。

「『私はもう長くないから、ちょっとの間だけどよろしくね』と言われたんです。『そんなこと言わんと、頑張ろう』とお返事して、通わせていただくことになりました」

先生は週3回、決まった曜日の決まった時間に伺いました。しばらくたった頃、その方からこんな言葉をかけられます。

「あんたがこの時間に来るから、この時間に起きなあかんくなった。それまでにご飯も食べなあかんくなった」

それまでは、眠いときに眠り、体を動かすのもおっくうで、食事をとらない日もあったそうです。決まった時間に人が訪ねてくることで、少しずつ生活のリズムが整っていきました。

「『3食食べるなんて何年ぶりやろ』とおっしゃったり、『玄関先まで頑張って歩いてきた。足は痛かったけど』と報告してくださったり。伺うことで変わることがあるんだな、と確かめさせていただきました。訪問をやってよかったと、心から思わせてくれた方です」

今も訪問施術は続いています。長く歩くと膝が痛み、寝込んでしまう日もあるそうです。それでも、施術の時間だけでなく、毎日の暮らしそのものに小さな張りが生まれました。

整骨院では、来てくださった方を笑顔にして帰すことが仕事でした。ご自宅に伺う今は、笑顔を残して帰ること。先生にとっての仕事の締めくくりは、舞台とともに変わりました。

※ご本人の感じ方や生活の変化には個人差があります。

ケアマネジャーや主治医とつながる「チームの一員」として

訪問の仕事は、患者様との1対1だけで完結するものではありません。ご家族、ケアマネジャー、主治医、ヘルパー。患者様の暮らしを支える多くの人とつながりながら進めていきます。

先生にとって、それは開業してから知った楽しさのひとつでした。

「患者さんがケアマネジャーさんの話をされることって、すごく多いんです。『こんなに親身になってやってくれる』って。実際にご挨拶に伺うと、『この方はこういうところに気をつけてね』と、たくさん情報を教えてくださるんです」

先生も、施術の中で気づいた変化や、うまくいったこと、気がかりなことを、できる限りケアマネジャーに報告しています。情報をいただき、こちらからもお返しする。その積み重ねが、患者様を支えるチームになっていきます。

主治医のもとへ挨拶に伺うことも多いといいます。「今こういう課題があるんですが」と相談するうちに、病院の先生と話す機会も自然と増えていきました。あるとき、足を地面につくのが難しくなってきた患者様がいました。先生は主治医に状態を報告し、次の受診の際に診ていただけないか、必要であれば装具も含めて検討していただけないかとお願いしました。判断は、もちろん主治医にお任せしたうえでのことです。

しばらくして、その患者様は主治医の判断でつくられた新しい装具をつけていました。

「『あんたが言ってくれたんか』と言われて。自分ひとりではどうにもできないことがたくさんあるので、周りの方に助けていただきながらやっています。一人でやっているんじゃないと、すごく感じますね」

施術の時間には、体のことだけでなく、日ごろの悩みや不安にも耳を傾けます。そこで気になることがあれば、介護チームや主治医と話し合いながら、その方にとってよりよい形を探していく。それが、先生の考える訪問のチームワークです。

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5年後、5人の仲間と100人の患者様を

今後について伺うと、先生ははっきりと「仲間を増やしたい」と答えてくれました。目標は、5年以内に施術者5名で、約100名の地域の患者様を継続して担当できる体制をつくることです。まずは、ご縁のあった高槻の地域にしっかりと根を張ることを考えています。

拠点とする高槻市は、先生いわく「大阪でも住みやすい町」です。駅前には百貨店や商業施設が並び、商店街には飲食店がひしめいています。隣の茨木市とは「どちらが住みやすいか」でよく比べられるそうで、先生が挙げる高槻の強みは新快速が停まること。京都にも大阪にも15分ほどで出られるといいます。

 

訪問エリアは高槻市を中心に、茨木市や枚方市、島本町にも伺っています。「そのあたりも訪問の強みなのかなと思います」と先生は話します。

一緒に働きたいのは、どんな人なのでしょうか。

「この仕事は特に、人が大事なんです。人に対してどういう思いでやっているのかを、ちゃんと表現できる人と働きたい。その人を笑顔にしたい、という気持ちが通じる人と一緒に仕事がしたいですね。技術は、いくらでも教えてあげられるので」

院長時代に知った「結局は人」という実感と、師匠から受け継ぎ、今は「笑顔を残して帰るまでが仕事」という形になった教え。その両方が、先生の仲間選びの基準になっています。

高齢者と子どもをつなぐ、新たな居場所づくりの夢

訪問を続ける中で、先生が改めて感じていることがあります。

「訪問を続けている中で、外に出る機会が減って、人と話すことも少なくなっている方が結構いらっしゃるんです。
そういった方々と接していると、日々の生活に物足りなさや寂しさを感じている方も少なくないんだなと感じます。」

一方で、小学生のお子さん3人を持つ父親としても、気になっていることがあります。夏休みになっても外は暑すぎて遊べず、家でゲームや動画を見て過ごすしかない。子どもたちにもまた、居場所が足りていないと感じているのです。

「ここをくっつけてあげられたら、みんな幸せになるなと思って。そういう空間をつくりたいんです。高齢の方と子供たちが集まって、お祭りみたいに盛り上がるイメージをしています」

高齢者と子どもが自然に交わり、お互いの時間を豊かにし合える場所。日々ご自宅に伺い、高齢の方の暮らしを間近で見ている先生だからこそ描ける夢です。

以前はロードバイクにも乗っていたという先生。今の休日の楽しみは家族でのキャンプで、月に1回は出かけられたらいいなと思っているそうです。

まとめ:祖母の笑顔から始まった道

祖母を笑顔にしてくれた一人の鍼灸師に憧れ、「魔法使いになりたい」と鍼灸の道へ進んだ少年がいました。彼は整骨院で、来てくださった方を笑顔にして帰すことを師匠から教わります。院長として「結局は人」だと知り、支えきれなかった母娘への後悔を胸に、ご自宅へ伺う道を選びました。

訪問施術の現場で先生が向き合うのは、体のつらさだけではありません。諦めかけた気持ち、ひとりで過ごす長い1日、介護を担うご家族の疲れ。その一つひとつに寄り添いながら、ケアマネジャーや主治医とも連携して、その方らしい暮らしを一緒に支えていきます。

開業して以来大切にしてきた想いが、「笑顔を残して帰るまでが仕事」。院に掲げた「患者様もご家族も笑顔に」という願いを胸に、先生は今日も高槻の町でご自宅への訪問を続けています。

訪問施術を迷っているご家族へ伝えたいこと

訪問鍼灸は、地域の方にまだまだ知られていないサービスだと感じている、と先生は話します。知らない方に説明するなら、どう伝えるか。先生の答えはシンプルでした。

「専門の知識を持ったスタッフ(国家資格保持者)が、お一人おひとりに寄り添って施術させていただくサービスです」

一方で、初めての方にとっては、知らない人を家に上げること自体が大きなハードルになることも、先生はよくわかっています。

「どんな人が来るのかわからないですし、不安に思われるのは当然だと思います。それでも、僕なら大丈夫です、とお伝えしたいです」

その言葉を裏付けるように、初めての方には、まずご自宅に伺ってお話を聞く時間を設けています。今の体の状態や暮らしの様子を伺ったうえで、訪問鍼灸の対象になるか、どのような施術を行うのか、医師の同意書などの手続きをどう進めるのかを説明します。相談したからといって、その場で利用を決める必要はありません。

医療保険の療養費の支給申請をすることで、施術費用の一部負担で施術を受けることもできます。その場合は医師の同意が必要ですが、同意書の準備や手続きは院がサポートしています。保険を使えるかどうかは症状などによって異なるため、まずは相談してほしいとのことです。また、介護保険とは別の制度なので、ケアプランの限度額とは関係なく利用できます。

準備するものは、健康保険証と、施術のためのベッド1台分のスペース。予約に空きがあれば、当日の申し込みにも対応しています。

最後に、この記事を読んでくださっている方へのメッセージを伺いました。

「体の痛みや、思うように動かなくなってしまったところはもちろんですが、人とのコミュニケーションが減ってくると、どんどん元気がなくなってしまいます。体がつらくて人と会う機会が減っているのであれば、早めに訪問鍼灸のようなサービスを使って、人との接点をつくってあげてほしい。そこから元気になるきっかけをつくれたらいいなと思っています」

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