脳梗塞後遺症、退院後にどうする?
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脳梗塞後遺症、退院後にどうする?
脳梗塞の退院後、
「この麻痺はどこまで良くなるのだろう」
「しびれや手足の動かしにくさは、このまま残るのだろうか」
「自宅では、どんなリハビリをすればいいのだろう」
と不安になる患者さんやご家族は少なくありません。
脳梗塞の後遺症は、すべての方に同じように現れるわけではありません。脳のどの部分が、どの程度障害されたかによって、手足の麻痺やしびれ、言語障害、高次脳機能障害、飲み込みにくさなど、さまざまな症状が現れます。
また、後遺症が残ったからといって、その後まったく変化しないというわけでもありません。
この記事では、脳梗塞で起こりやすい後遺症の種類や症状、回復の考え方、自宅でのリハビリ、ご家族の接し方について、できるだけ分かりやすく解説します。
脳梗塞の主な後遺症一覧
脳梗塞の後遺症には、主に次のような症状があります。
- 手足が動かしにくくなる「運動麻痺・片麻痺」
- 手足のしびれや感覚が鈍くなる「感覚障害」
- 言葉が出にくい、理解しにくい「失語症」
- ろれつが回りにくくなる「構音障害」
- 記憶や注意、判断などに影響する「高次脳機能障害」
- 食べ物や飲み物を飲み込みにくくなる「嚥下障害」
- 視野の一部が見えにくくなるなどの「視覚・空間認識の障害」
同じ脳梗塞でも、症状の種類や重さは人によって大きく異なります。
まずは、それぞれどのような後遺症なのかを見ていきましょう。
脳梗塞の後遺症はなぜ起こる?
脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、その先に血液や酸素が十分に届かなくなる病気です。
脳には、手足を動かす、言葉を話す、物事を考える、食べ物を飲み込むなど、それぞれの働きを担当する場所があります。
そのため、脳梗塞によって障害された場所によって、現れる後遺症も変わります。
たとえば、身体を動かす働きをする部分が障害されると手足の麻痺が起こることがあります。
言葉に関係する部分が障害されれば、言葉が出にくくなったり、相手の話を理解しにくくなったりする場合があります。
つまり、同じ「脳梗塞」という病気でも、脳のどこが、どの程度障害されたのかによって後遺症は異なるということです。
脳梗塞の後遺症は治る?「治癒」と「改善」の違い
脳梗塞の後遺症について、「元通りに治りますか?」と心配される方は多いと思います。
ここでは、「元の状態に戻ること」と「機能や生活が改善すること」を分けて考えることが大切です。
一度大きく損傷した脳の神経細胞そのものを、発症前とまったく同じ状態に戻すことは簡単ではありません。
一方で、脳には、残された神経回路が働きを補ったり、新しいつながりをつくったりする性質があります。
このような脳の性質を「可塑性」といいます。
そのため、リハビリや日常生活の中で身体を使うことを続けることで、次のような変化がみられることがあります。
- 歩ける距離が伸びる
- 立ち上がりやすくなる
- 麻痺した手を使える場面が増える
- 着替えやトイレがしやすくなる
- 福祉用具を使って自分でできることが増える
元の身体機能に完全に戻らなくても、生活しやすくなることも大切な「回復」の一つです。
脳梗塞の3つのタイプと後遺症の違い
脳梗塞は、原因や詰まる血管によって主に「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」などに分けられます。
それぞれ障害される脳の範囲が異なるため、後遺症の現れ方にも違いがあります。
ラクナ梗塞
脳の細い血管が詰まるタイプです。
比較的小さな範囲に起こることが多く、片側の手足の麻痺やしびれなど、限られた症状がみられることがあります。
ただし、小さな梗塞であっても、起きた場所によっては着替えや歩行などの日常生活に大きな影響が出ることがあります。
アテローム血栓性脳梗塞
動脈硬化によって脳の血管が狭くなったり、血栓ができたりして起こるタイプです。
半身麻痺、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害など、さまざまな症状が現れることがあります。
心原性脳塞栓症
心房細動などによって心臓の中にできた血栓が、血流に乗って脳の血管まで流れ、詰まるタイプです。
突然発症することが多く、障害される範囲が広い場合には、重い半身麻痺や言語障害、意識障害などがみられることがあります。
ただし、症状だけを見て脳梗塞のタイプを正確に判断することはできません。
CTやMRIなどの検査を行い、医師が総合的に診断します。
脳梗塞後によくみられる後遺症と症状
運動麻痺・片麻痺
脳梗塞の代表的な後遺症の一つが、身体の片側に起こる麻痺です。
手や足に力が入りにくくなったり、思ったように動かせなくなったりします。
麻痺があると、次のような日常生活の動作が難しくなることがあります。
- 立ち上がる
- 歩く
- 着替える
- トイレへ行く
- 入浴する
- 食事をする
すべてを発症前と同じようにできることだけを目標にする必要はありません。
手すりや装具、福祉用具などを利用しながら、「自分でできること」を増やしていくことも重要です。
また、麻痺した手足を長く動かさない状態が続くと、筋肉がこわばったり、関節の動く範囲が狭くなったりすることがあります。
身体の状態を確認しながら、無理のない範囲で動かす機会を持つことが大切です。
しびれ・感覚障害
脳梗塞によって、手足がしびれたり、触られている感覚が分かりにくくなったりすることがあります。
温度の感覚が鈍くなる場合もあるため、入浴時のお湯の温度や暖房器具によるやけどなどにも注意が必要です。
また、足の感覚が低下すると、身体のバランスを取りにくくなり、転倒につながることがあります。
失語症・構音障害
脳梗塞後には、言葉に関する障害が現れることがあります。
「失語症」では、言葉が出にくくなったり、相手の言っていることを理解しにくくなったりします。
話すだけではなく、聞く・読む・書くといった言語機能に影響する場合もあります。
一方、「構音障害」では、考えていることや言葉の意味は分かっていても、口や舌などがうまく動かず、ろれつが回りにくくなることがあります。
言いたいことがうまく伝わらない状態は、患者さんにとって大きなストレスになります。
ご家族は急かさず、本人が話そうとしていることをゆっくり待つことが大切です。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、記憶や注意、判断、物事を順番に進める力、感情のコントロールなどに問題が起こる状態です。
たとえば、次のような変化がみられることがあります。
- 同じ質問を何度も繰り返す
- 日付や予定を忘れる
- 一度に複数のことができなくなる
- 以前できていた家事などがうまくできない
- 集中が続きにくくなる
- 怒りっぽくなるなど、以前と性格が変わったように見える
本人が自分の変化に気づいていないこともあります。
ご家族が「以前とは何か違う」と感じた場合は、具体的な出来事を医師やリハビリスタッフへ伝えることが大切です。
嚥下障害
嚥下障害とは、食べ物や飲み物をうまく飲み込めない状態です。
食事中にむせたり、飲み込みに時間がかかったりすることがあります。
特に注意したいのは、むせがなくても食べ物や唾液などが気管へ入ってしまう場合があることです。
嚥下障害は誤嚥性肺炎などにつながることがあるため、医師や言語聴覚士などによる専門的な評価が重要です。
食事の形態や姿勢についても、自己判断ではなく専門職の指導に合わせることが大切です。
視覚・空間認識の障害
脳梗塞によって、視野の一部が見えにくくなったり、片側にある物へ気づきにくくなったりすることがあります。
たとえば、
- 食事を片側だけ残す
- 壁や家具にぶつかる
- 片側にいる人や物に気づきにくい
といったことがみられる場合があります。
家具の配置など、自宅の生活環境を工夫することも重要です。
脳のどの部分が梗塞したかによって症状は変わる
脳のどの部分が障害されたかによって、現れやすい後遺症には一定の違いがあります。
たとえば、手足の運動に関係する部分が障害されれば麻痺が起こりやすく、言葉に関係する部分が障害されれば失語症などがみられることがあります。
また、飲み込みや身体のバランスなどに関係する場所が障害されると、嚥下障害やふらつきなどが起こる場合があります。
ただし、患者さんやご家族が症状だけを見て、梗塞した場所を判断する必要はありません。
正確な場所は、CTやMRIなどをもとに医師が診断します。
それよりも、「現在の生活で何ができて、何に困っているのか」を具体的に把握することが、その後のリハビリを考えるうえで重要です。
脳梗塞の後遺症はいつまで回復する?
脳梗塞では、発症後の早い時期に身体機能が大きく変化することがあります。
そのため、急性期や回復期のリハビリは重要です。
一方で、「発症から半年たったら、もう改善しない」と一律に考える必要はありません。
発症から時間が経った後でも、身体の状態や後遺症の程度に応じて、動作や生活のしやすさが変化することがあります。
たとえば、
- 身体の状態に合った運動を続ける
- 生活の中で手足を使う機会を作る
- 装具や福祉用具を活用する
- 専門職の指導を受ける
- 自宅の環境を整える
など、複数の方法を組み合わせていきます。
「発症から何か月たったか」だけではなく、現在の身体の状態や生活上の課題をもとに考えることが大切です。
脳梗塞のリハビリは時期によって目的が変わる
急性期のリハビリ
発症直後は、まず生命や身体の安全を守ることが最優先です。
医師の管理のもとで全身状態を確認しながら、ベッド上で身体を動かしたり、座る練習をしたりします。
長期間身体を動かさないことで起こる筋力低下や関節のこわばりなどを防ぐことも目的です。
回復期のリハビリ
全身状態が安定すると、日常生活を取り戻すためのリハビリが中心になります。
立ち上がりや歩行、着替え、トイレ、食事など、その方の生活で必要な動作を練習していきます。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが、それぞれの専門的な立場から状態を確認します。
生活期のリハビリ
退院後、自宅で生活するようになると、「生活そのもの」がリハビリになる場面が増えてきます。
- ベッドから自分で起きる
- トイレまで移動する
- 自分で食事をする
- 着替えをする
- 家族と外出する
こうした日常生活の動作を続けることも大切です。
また、状態によっては「さらに改善すること」だけではなく、今できていることを維持し、身体機能の低下を防ぐことが重要な目標になることもあります。
脳梗塞後の自宅リハビリで大切なこと
退院すると、「家でもたくさん運動しないと」と焦ってしまう方もいます。
しかし、自宅リハビリでは、強い運動をたくさん行うことよりも、安全に継続できることが重要です。
次のような点を意識しましょう。
- 無理のない短い時間から始める
- 転倒しにくい安全な環境で行う
- 痛みや強い疲労が出る運動は避ける
- 医師やリハビリ専門職から教わった方法を行う
- 日常生活の中で自然に身体を使う
「30分運動する」と決めるだけではなく、日常生活に身体を使う機会を取り入れることもできます。
たとえば、自分で立ち上がる、食事の際に麻痺した手を添える、できる部分は自分で着替えるといったことも、生活の中での取り組みです。
家族が介護するときは「やりすぎない」ことも重要
脳梗塞後の生活では、ご家族が「できるだけ助けてあげたい」と考えるのは自然なことです。
しかし、何でも先回りして手伝ってしまうと、本人が身体を使う機会が減ってしまいます。
時間がかかっても自分でできることは、できる範囲で本人に行ってもらうことが大切です。
たとえば、持ちやすいスプーンを用意したり、手すりを設置したりして、本人が自分でできる環境を作ります。
「全部代わりにしてあげる」のではなく、「自分でできるように手伝う」という考え方です。
また、「もっと頑張って」「どうしてできないの」と急かすことも、本人の負担になることがあります。
「今日はここまでできたね」など、できたことを具体的に認めることが自信につながります。
脳梗塞後の心理的な落ち込みにはどう接する?
脳梗塞後は、身体が思うように動かないことなどから、気持ちが落ち込む場合があります。
このようなときに「前向きに考えよう」「頑張って」と励ますだけでは、かえってプレッシャーになる場合もあります。
大切なのは、本人が「自分にもできることがある」と感じられる環境を作ることです。
- 自分でできる動作を任せる
- 電話に出てもらう
- 簡単な家事をお願いする
- 家族との会話に自然に参加してもらう
など、生活の中で役割や出番を持ってもらう方法もあります。
なお、強い落ち込みや意欲低下が長く続く場合には、脳卒中後うつなどが関係していることもあります。
本人の性格や気持ちの問題だけと考えず、必要に応じて主治医へ相談しましょう。
自宅の環境を整えることもリハビリの一つ
脳梗塞後の生活では、身体だけでなく自宅の環境も重要です。
たとえば、
- ベッドからトイレまでに物が置かれていないか
- 立ち上がりやすい高さの椅子か
- 必要な場所に手すりがあるか
- よく使う物を取りやすい場所に置いているか
- 転倒しやすい段差やマットがないか
などを確認します。
「頑張って歩く」ことだけを考えるのではなく、本人が安全に自分で動ける環境を作ることも重要です。
訪問リハビリと訪問マッサージの違い
退院後、自宅で身体のケアを受けたい場合には、「訪問リハビリ」や「訪問マッサージ」などの選択肢があります。
名前は似ていますが、役割は異なります。
訪問リハビリ
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが自宅を訪問し、歩行や日常生活動作、言語・嚥下など、それぞれの専門性に応じたリハビリを行います。
訪問マッサージ
訪問マッサージでは、国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師が患者さんの自宅や施設へ訪問します。
身体の状態に応じて、筋肉のこわばりや関節の動かしにくさなどに対する施術を行います。
歩行が難しいなど一定の条件を満たし、医師の同意を得た場合には、健康保険による療養費の対象となることがあります。
訪問リハビリと訪問マッサージは、どちらか一方だけを選ばなければならないものではありません。
患者さんの身体状態や生活上の課題に応じて、ケアマネジャーや主治医などと相談しながら必要なサービスを組み合わせていきます。
脳梗塞の再発を防ぐことも大切
脳梗塞後は、後遺症への対応だけでなく、再発を予防することも重要です。
基本的には、次のようなことが大切になります。
- 血圧を適切に管理する
- 処方された薬を自己判断でやめない
- 禁煙する
- 糖尿病や脂質異常症などを適切に管理する
- 医師から水分制限を受けていない場合は脱水に注意する
- 身体状態に合った運動を続ける
ただし、何を優先すべきかは、脳梗塞の原因や持病によって異なります。
心房細動などが原因の場合には、医師から処方された薬を適切に続けることが特に重要になる場合もあります。
「自分の場合は、何に気をつければいいですか?」と主治医へ確認しておくとよいでしょう。
通院が難しい場合は自宅で受けられるケアも検討を
脳梗塞後の生活では、病院を退院した後も身体の悩みが続くことがあります。
- 麻痺した手足が動かしにくい
- 筋肉のこわばりが強くなってきた
- 関節が動かしにくくなってきた
- 歩くことが難しく、通院が大変になった
- 自宅でも身体のケアを続けたい
このような場合は、主治医やケアマネジャーなどへ相談し、自宅で利用できるサービスを検討する方法もあります。
訪問マッサージも、その選択肢の一つです。
大切なのは、「元通りにする」という一つの目標だけにとらわれないことです。
- 今より少し立ち上がりやすくしたい
- 身体のこわばりを少なくしたい
- 関節が動かしにくくなるのを防ぎたい
- 今できている生活をできるだけ続けたい
など、患者さん一人ひとりに合った目標があります。
発症からの期間だけで判断せず、現在の身体状態や生活上の困りごとを確認しながら、医療・介護の専門職と一緒に自分に合った方法を考えていくことが大切です。
脳梗塞の後遺症に関するよくある質問
脳梗塞の後遺症にはどのような症状がありますか?
代表的な後遺症には、片麻痺、手足のしびれなどの感覚障害、失語症や構音障害、高次脳機能障害、嚥下障害、視覚や空間認識の障害などがあります。
障害された脳の場所や範囲によって、現れる症状や重さは一人ひとり異なります。
脳梗塞の後遺症は発症から半年を過ぎると改善しませんか?
発症後の早い時期に大きな変化がみられることはありますが、半年を過ぎたら一切改善しないと一律に考える必要はありません。
発症から時間が経った後でも、その方の身体状態に合ったリハビリや日常生活での活動、福祉用具の活用などによって、動作や生活のしやすさが変化することがあります。
脳梗塞の後遺症には自宅でどんなリハビリをすればいいですか?
安全に継続できることが大切です。
自己流で強い運動を行うのではなく、病院やリハビリ専門職から指導された内容をもとに、日常生活の中で無理なく身体を使うことを意識します。
家族はどこまで介助した方がいいですか?
安全を確保する必要はありますが、何でも家族が代わりに行うと、本人が身体を使う機会が減ってしまうことがあります。
できる部分は本人に行ってもらい、難しい部分だけを手伝うという考え方が大切です。
脳梗塞の後遺症で訪問マッサージは受けられますか?
脳梗塞後の麻痺や筋肉のこわばり、関節の動かしにくさなどがあり、歩行が難しく通院が困難な場合などには、訪問マッサージが選択肢になることがあります。
健康保険による療養費を利用する場合は、身体状態などの条件に加えて医師の同意が必要です。
まとめ|脳梗塞の後遺症は「今できること」から考える
脳梗塞の後遺症には、麻痺やしびれだけでなく、言葉、記憶、飲み込み、視覚など、さまざまな症状があります。
後遺症の種類や程度は、一人ひとり異なります。
そのため、「脳梗塞になったらこうなる」「発症から何か月たったらもう良くならない」と一律に考えるのではなく、今の身体状態や生活上の困りごとを見ることが大切です。
また、リハビリは無理に頑張ることだけが目的ではありません。
福祉用具や自宅の環境を整えたり、本人ができることを生活の中で続けたりすることも重要です。
通院が難しい場合には、訪問リハビリや訪問マッサージなど、自宅で受けられるサービスもあります。
患者さん本人だけで抱え込まず、ご家族、主治医、ケアマネジャー、リハビリスタッフなどと相談しながら、その方に合った方法を考えていきましょう。
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