こんにちは、
日本訪問マッサージ協会の藤井です。
鍼灸師で、とくに資格を取得したばかりの方は
とにかく人の体に針を打ちたいという要望が
とにかく高いです。
「はり」という道具を使って
お身体の不調を抱える方の
健康回復をするのが仕事なので
当然と言えば当然です。
専門学校時代に学んだ、
東洋医学や経絡医療に基づく手法で
体のツボを刺激することで
人間本来が持つ自然治癒力を
高めたいと思うのです。
なので、在宅で治療が必要な患者さんも
「針を刺せば元気になる!治る!」
と思い、とにかく、
刺したい!刺したい!刺したい!
とお考えの鍼灸師さんも多いです。
ただ、鍼灸の施術を高齢者に施す場合、
高齢者は感覚的に鈍くなっている場合もあり
言われるままに大きな刺激量を加えると
かえってお体に悪影響をあたえることもあるので、
むしろ注意が必要です。
それよりも、痛みがある部位や
固くなった関節に対して
東洋医学や経絡治療の基礎を学んだ
鍼灸師の手指でほぐしてあげて、
そのあとで、心地よい刺激の
ローラー鍼やてい鍼などの
施術を行った方が高い効果を
与えることが出来ます。
てい鍼を使って押圧する手技であれば
術者が力を入れなくても、心地よさを感じていただく
施術はある程度可能です。
(力の弱い女性鍼灸師でも対応できる方法です)。
寝たきりや体の弱った
高齢者の患者さんに対しては、
かえって、力を入れた手技の経験しかない方は
骨折事故につながるケースや
強すぎて痛がられることも少なくありません。
その一方で、鍼灸治療の一連の動作の中にある
「前揉ねん・後揉ねん」で行っているような
やわらかい刺激の「ほぐし行為」「緩ませる行為」は
とても喜ばれます。
もう1点、在宅で鍼灸治療を行う場合は
リスク管理もしっかり行う必要があります。
自分一人で開業しているのであればいいのですが、
鍼灸師を雇用したり業務委託をしている場合は
より慎重な対応が求められます。
僕は資格を取得したのが2005年でした。
それ以降、現場での施術をしてきましたが、
過去に1度だけ、施術中のミスをしたことがあります。
それは、50代の女性で脊髄小脳変性症の患者さんでした。
普段はベッドでほぼ寝たきりという状態でした。
そんな患者さんとご家族の要望で、
「頭に針を打って欲しい」ということで、
頭部への鍼治療をしていました。
最初の頃は、こちらも緊張していたこともあり、
ミスが無いように細心の注意をしていました。
しかし、慣れてきた時に事故は起きました…。
そう、頭に刺した針を抜き忘れてしまったんです。
施術した翌日に家族から
お怒りの電話が掛かってきて
判明したのですが、
その時は、すぐに対応して、
誠心誠意の謝罪をしました。
幸いなことに、患者さんにも
ご家族様にも許していただき、
医療賠償のような事態にはならなかったのですが、
もし、対応が遅れたら、
何かしらの感染症になって
最悪の場合は、死亡へと
繋がっていたかもしれません。
治療家として、一生に一度
あるかないかの”負の出来事”でした。
「刺したい願望が強い鍼灸師さん」には、
鍼灸の治療効果と
鍼灸をすることで起こりうる
リスク管理のバランスを考えて
それぞれの院での対応が必要ですね^^